REPORT
レポート
SHIBUYA109 lab.
2018.09.25
#エンタメ・カルチャー
【東大研究員×フリュー×SHIBUYA109 lab.連載企画】プリ帳HISTORY 第5回
「プリ帳」からガールズカルチャー史をひも解く本連載。第5回目のゲストは、アパレル会社のマーケティング担当坂口ゆりさん。
毎回ゲストを迎えて「プリ帳」から日本のガールズカルチャー史をひも解く連載企画“プリ帳ヒストリー”。
“盛り”を研究する久保友香先生。誕生以来若い子たちを魅了し、その青春を写し出してきたプリントシール機シェアNo.1のフリュー株式会社。そして長年若者の流行を見続けてきたSHIBUYA109の視点をかけ合わせることで、各世代のプリ帳を考察していきます。
第5回目のゲストは、現在アパレル会社のマーケティングを担当している坂口ゆりさん。
高校時代、プリを持ち運び用カレンダーに貼っていたというのですが、一体どういうことなのか、お話を伺いました。

ゲストの「プリ履歴書」

 

【研究メンバーはこの3人】

 

久保友香先生

シンデレラテクノロジーを研究

稲垣涼子さん

フリュー株式会社『ガールズトレンド研究所』で所長を務める

長田麻衣

「SHIBUYA109lab.」で所長を務める

 

一石二鳥!? プリ帳に使っていたのは壁掛け用のカレンダー

 

 

プリ帳を持ってきていただいたのですが、これはカレンダーですか?

 

はい、本当は壁掛け用のカレンダーなんですけど、プリを貼って“プリ帳”代わりにしていました。たしか高1は一般的なプリ帳で、高2と高3はこのスタイルだったような…。

カレンダーを使うのって珍しいですね!

私の周りではこのスタイルが結構流行っていましたよ。

 

日にちのところにプリが貼ってありますが、どのように貼っていたのですか?

 

例えばこのページは、上が自分が撮ったもので、下のカレンダー部分が友達からもらったプリ。最初は「プリを1日1枚貰って貼る」というルールでしたが、徐々に「もらったら貼る」というルールになりました。ちなみに、小さいサイズのプリってみんな余っているので、欲しいって言うと結構喜ばれましたね(笑)。

日記のようにも使っていますが、これは人に見せていたのですか?

 

はい、日記部分もありますが、そこは気にせず読んでもらっていました。ちなみに、カレンダーなので予定も分かるし友達の誕生日も記録できるし、この1冊でいろいろなことがカバーできて便利でした。

 

たしかに!便利!!

大人数で撮影するときは大サイズでプリント!

 

カレンダーを見ていると、カラーコピーしてあるプリが目立ちますが。

 

大人数でプリを撮るときは、カラコが大活躍していました!例えば部活のメンバーで撮る場合、大きく印刷した現物(プリ)は部室のロッカーのところに貼って、あとはコンビニでカラコしてシェアする感じで。

なるほど!当時プリをカラーコピーする文化はありましたがここまでカラーコピーを活かしているのは珍しいですね!

このとき写真は、デジカメではなくインスタントカメラだったので、大人数で集合写真を撮った場合、焼き増しも大変だったんですよね。そういった意味でも、プリは使えました。

 

よく大人数でプリを撮っていましたか?

 

はい、手軽に綺麗な集合写真を撮ろうとするとプリが最適でしたね。機械の中に結構な人数が詰まって撮影していました。

この時代のプリは、いまより広くて大人数で撮りやすかったですね。写りがなにより重視される現在では、光学環境などの関係で撮影空間をあまり広くとらない機種も多くなってきています。

たしかに!いまのプリにはこんな人数入らなさそうですよね!

 

SHIBUYA109でのお買い物は全フロア・全店舗見る派

 

当時、休日に遊びにいく場所はどこでしたか?

 

吉祥寺と渋谷ですかね。だいたいお昼ご飯食べてお買い物してプリを撮るというのがお決まりのコース。出かけると絶対プリは撮っていた気がします。

SHIBUYA109には行っていましたか?

行っていました!中学のときは「109いくよ!」って一大イベントで! あと、年始の福袋は毎年必ず行っていましたね。

SHIBUYA109に行った際はどのようにお店を見ていましたか?

 

基本的に入っているショップを全部見ていました。上から見る派と下から見る派がいたのですが、私は基本的に上から全フロア見る派でした。

いまも、SHIBUYA109 を上から下まで回るとその時のトレンドがわかると言われていて、坂口さんのように全部のフロア回る子は多いですね。どんなブランドが好きでしたか?

「ONE WAY」とか「LOVE BOAT」とか!「LOVE BOAT」といえば、同級生がとある先輩にバレンタインのプレゼントをあげたらそのお返しが「LOVE BOAT」のキーケースだったんです。その噂が回って、みんな翌年その先輩にお返し目的でバレンタインにプレゼントをあげるってことがありました(笑)。それくらい“ラブボのキーケース”が、当時の高校生の憧れだったんですよね(笑)。

 

その年のお返しが気になる(笑)!

プリ用の字を練習!?重要視していたのは「ペン」「落書き」

 

プリの機種は何が好きでしたか?

 

「やまとなでしこ」や「桃色宣言。」を結構撮っていたような!当時は「プリ撮りに行こう」ではなく機種の名前で「◯◯撮りにいこう」って言っていた記憶があります。人気の機種はめちゃ並んでいて、撮るのに一苦労でした。

プリを撮るうえで何を重視していましたか?

 

その頃「盛る」がなかったので、私たちの間では「ペン」が重要でしたね。キラキラがあるかないか。友達の中には落書き名人みたいな人もいました。このドラえもんのやつとかすごいですよね。

クオリティ高いですね!

 

プリ用の字が上手い子がいたり、一方で自分の字にコンプレックスがあって上手い子の字を真似て練習している子がいたり、本当に落書きが重要で…。

当時は、雑誌などでもよくかわいい文字を練習する企画等もありましたね。

 

そういえば、坂口さんのプリ帳(カレンダー)には、男子も多く登場しますね!

 

中高共学に通っていて、うちの学年は男女仲よかったので、よく一緒に撮っていました。吉祥寺のロフトの地下でよくプリを撮っていたんですけど、「男性が入れるエリア」「男性だけでは入ってはいけないエリア」「女性専用エリア」などに分かれているんです。どうしても女子専用のほうに最新機種があるので、男子からすると女子と一緒に撮るときは少しいい機種で撮れるって感じでしたね。

男子は嫌がったりしないんですね!

 

そうですね、むしろ喜んでいたような!男子だけで撮っていることも周りでは結構ありました。だいたいサッカー部とかラグビー部だととりあえず脱ぐ!みたいな(笑)。ただプリを交換したりプリ帳を作っている男子はいませんでしたね。アトラクション・エンターテイメント的な楽しみ方をしていた気がします。

あえてやらなかったmixi!SNSはTwitterでデビュー

 

当時、携帯でプロフとか流行っていたと思いますが、何かやっていましたか?

 

前略プロフは少しやっていました!その後私はやらなかったのですが、周りの友達はみんなmixiに流れていきましたね。当時mixiに年齢制限があったので、高3でできるようになると周りの人は「大人になった!」って喜んでいました。

2006年はちょうどmixiのユーザ数が急増した年ですが、なぜやらなかったのですか?

mixiを始めた友達たちが「コメントはないのに足跡がついてるー!」とか、足跡(誰がいつ自分のページを見たかがわかるmixiの機能)で一喜一憂していて(笑)。とにかく足跡が面倒くさそうで嫌で…やりませんでした!

Twitterはやりましたか?

 

はい、大学のときにTwitterを始めて、晴れてSNSデビューとなりました!

Instagramに似ている!? 当時の“プリ帳”を振り返り

 

当時のプリ帳(カレンダー)を振り返ってみてどうですか?

 

写真は意外とあまりきちんと保管できなくて結構バラバラになっていたりするのですが、プリは「シール」だしサイズ的にもまとめて残しやすいものだったんだなと感じました。

改めてプリの良さってどんなところにあると思いますか?

 

私の場合、交換がとにかく楽しかったんですよね。正直、写真って自分が写ってないといらないじゃないですか(笑)。だから交換はプリならではの文化だなと改めて思いました。それきっかけで話しかけている子とかもいましたし!

坂口さんのカレンダープリ帳を見ていて、写真に残す日々の記録という意味でInstagramに通じているなと思ったのですが…。

それにしても坂口さんのInstagramがとってもオシャレ♪

Instagramやってる一番の理由は「自分の記録」。でも「見せたい」というのも大きいと思います。そういった意味では確かにカレンダーのプリ帳と同じかもしれないですね!

 

 

取材・文/高尾ひとみ

 

 

 

PROFILE

 

稲垣 涼子 Ryoko Inagaki

2005年入社以来、プリントシール機の商品企画に携わる。現在はマネージメントも行う。
趣味は、美味しいもの、漫画、カラオケ、ホットヨガ、ダイビング、脱出ゲーム。なんでも記録するログ癖あり。
今年の目標は、社内の仕組みを整える、社外の方とたくさんお話する、家をキレイに保つこと!

久保 友香 Yuka Kubo

東京大学大学院博士課程修了(環境学博士)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師、東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員など歴任。著書に『「盛り」の誕生―女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』(太田出版、2019)。
好きなものは、ビール、羊羹、芸能ニュース。
今年の目標は、昨年に引き続き、昭和初期を知るおばあちゃんたちとたくさん会うこと。

 

長田 麻衣 Mai Osada

総合マーケティング会社を経て、SHIBUYA109のマーケティング担当となる。
毎月200人のaround20(15歳〜24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。
好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。
今年の目標はSHIBUYA109 lab.所長として若者に関する講演に講師として登壇すること。そして「大人っぽさ」と「透明感」を兼ね備えた女性になること。

坂口 ゆり Yuri Sakaguchi

アパレル会社 マーケティング担当。

IT関連会社にてウェブサービスのプロデューサーを経て、アパレルメーカーのマーケティング担当となる。Instagramと旅行が大好きな典型的ミーハー女子。趣味は激辛料理めぐり。
今年の目標はドローンの空撮をマスターして、ウユニ塩湖で飛ばすこと。

プリ用の字の練習のお話がとても印象的でした。
当時は雑誌でもプリ用文字の書き方特集があったりなど、写り以外での見せ方の練習に力を入れていたようです。
また坂口さんのプリ帳は、人に見せることを意識しつつ、日々の記録もされていて、いまのInstagramに通じるものを感じました!