REPORT
レポート
SHIBUYA109 lab.
2020.06.25
#エンタメ・カルチャー
【シンデレラテクノロジー研究者×フリュー×SHIBUYA109 lab.連載企画】プリ帳HISTORY 第25回
毎回ゲストを迎えて、「プリ帳」から日本のガールズカルチャー史をひも解く連載企画“プリ帳ヒストリー”。
毎回ゲストを迎えて、「プリ帳」から日本のガールズカルチャー史をひも解く連載企画“プリ帳ヒストリー”。
第25回は、新型コロナウイルス感染防止のためZoomで開催しました! カラフルでPOPなプリ帳を見せてくださったゲストは、ウーパールーパーアーティストとして活躍するクリエイターのユキンタさん(33)。親の転勤の関係で「兵庫・尼崎生まれ→横浜(幼稚園)→岩手・盛岡(幼稚園)→兵庫・宝塚(小学)→岡山(中学)→福岡・北九州(高校)→京都(大学)→東京」と引っ越すことが多かったというユキンタさんに、高校時代のお話を伺いました!

ゲストの「プリ履歴書」

 

雑誌の切り抜きを背景に♪新種の“コラージュ系プリ帳”

 

高校時代のプリ帳を拝見したのですが、『それぞれのページに、まず大きなオブジェを配置し、その上にプリ、そして隙間をハートなどの模様で埋める』というシステムで、クオリティーの高さに感動しました!

 

ありがとうございます!貼っていたのは、当時買っていた雑誌「Seventeen」や「CUTiE」の切り抜きですね。こうしたら可愛くなるかな?って、実験しながら貼っていました。

 

ユキンタさんの高校時代である2003年〜2006年頃は、プリ帳にプリを敷き詰めて貼る人が多い時代だったと思うのですが、周りはどうでしたか?

 

私のようなスタイルのプリ帳を作っている人はいませんでしたね。私の場合、お手本はなく、ただ好きなものを思いのままに作っていた感じです。

 

今まで見てきた“コラージュ系のプリ帳”は、プリの間を雑誌の切り抜きなどで装飾するタイプでしたけど、雑誌の切り抜きなどを背景としてデザインしているのが、すごく新しい気がします!

 

ですね!水着の切り抜きに夏休みに撮ったプリを合わせるなど、季節やイベントに合わせてデザインされていて、パッと見て「夏に撮ったプリなんだな」って思いだせるのが素敵です!プリ帳には、どのようなことを書いていましたか?

 

プリに書ききれなかったその日の出来事を書いていました。あと引っ越しが多かったので、他の地域にいる友達から送ってもらったプリには名前とか「○○時代の友達」とか、友達の紹介も兼ねて書いていましたね。

 

同じレベルのものを…!プリ交換の暗黙ルール

 

 

このページ(※写真)のベースになっているグラフィクスは何ですか?

 

Chiharuさんという方が当時やっていた個人サイトに吹き出し付きの画像があって、ダウンロードして使わせていただいていました!おそらく手紙やメモ用だったのだと思うのですが。

 

手紙用のものをベースにプリを貼ってデザインしているプリ帳は、初めて見ました!

 

プリ帳に、ユキンタさんが映っているプリの割合が少ないのも興味深いです。

 

そうですね。私が映っているのは3割ほどで、友達から貰ったプリのページとすみ分けていました。

 

友達とは、どのように交換していたのですか?

 

不公平にならないよう、事前に「プリ交換しよう!」というやりとりをしていた気がします。例えば「カラーコピーしかくれない人にはカラーコピーで返す」とか、本物のプリは貴重だったので配分のバランスをとっていました(笑)。

 

 

そんな暗黙のルールが(笑)!

新機種は1度トライ!写り・落書き重視のプリ機選び

 

好きなプリの機種はありましたか?

 

当時好きだった機種は『花鳥風月』。あと『ミンナの気持ち、僕らの詩。』も!写りが綺麗で、落書きも可愛くできたのを覚えています。新機種が出たらまず1回撮って、気に入ったら次も同じ機種で撮るようにしていました。

 

遊びの要素があるプリ機もたくさんあったと思いますが、プリは「遊び」と「盛り」のどちらを重視していましたか?

 

どちらかというと盛れる方を重視していました!

 

「盛り」なんですね!ユキンタさんは、引越しを何度もされていますが、地域によってプリに違いはありましたか?

 

機種の導入が早いエリアがあったり、その地域で流行っているオリジナルの機種があったりはしましたね。例えば、岡山には無くて福岡にあった機種で、背景の設定や落書き・スタンプは無く、ただ写真を撮って色調補正ができる、アナログだけど写りが綺麗な機種がありました!

 

プリ機は、地域・店舗によって設置されている機種が若干異なりますが、全国でみると、“人気機種”に大きな差はありません。しかし、フリューで実施しているグループインタビューでメイクについてヒアリングすると、関西の子は濃い方が好きだったり、関東の子は清楚系の方が好まれたり、といった差が若干みられたりするので、もしかするとプリの写りの好みも地域によって分かれるかもしれませんね。

 

今の“本垢”と同じ!? プリ帳はリア充を作り上げる場

 

 

柔道部だったということですが、規則も厳しかったですか?

 

部活というより高校自体がめちゃくちゃ厳しくて。メイクも髪染めもダメ、スカートの長さも指定、携帯も見つかったら1ヶ月没収という感じで…。

 

厳しいですね…!プリ帳だけを見ていると、明るく自由な感じがして、厳しい規則の中過ごしていたようには見えなかったです!

 

理想の生活というか、いかに充実しているかをプリ帳でアピールしたかったのだと思います!「合宿楽しかった」ということを書いていたんですけど、たいして楽しくなかったんですよ(笑)。

 

今の若い子でいう“Instagramの本垢”のような感じですね!サブ垢は仲良い友達しかフォローしていないので本当の姿をさらけ出しますが、本垢はいかに充実しているのかを表現する場というか。

 

確かに、そういう部分はあったかもしれません!

 

「毎日プリとカラオケ」小学生時代に描いた高校生の姿

 

ファッションはどのようなものが好きでしたか?

 

特に好きなブランドはありませんでしたね。人と被らず個性を出したいと、古着が好きで、中でも原色系のものをよく着ていました。

 

どこで買っていましたか?

 

もう無くなってしまったようですが、当時福岡に『ラフォーレ原宿小倉』というファッションビルがあって、そこによく行っていました。ラフォーレ「原宿」だけど「小倉」です!

 

SHIBUYA109も九州だと鹿児島にあるのですが、『SHIBUYA109鹿児島』という名前です!旗艦店であるSHIBUYA109渋谷の世界観を凝縮し、鹿児島の地域に合わせてアレンジした業態のためSHIBUYAを敢えてつけています。

 

福岡の人は、マルキュー系ブランドや渋谷文化はいくらか縁遠いのでしょうか?

 

小学生の時、『GALS!(ギャルズ)』という漫画にハマっていて、私の中では“渋谷=『GALS!』の中の世界”で憧れでした。高校生になったら毎日プリを撮って毎日カラオケ行って…と、毎日遊ぶのが高校生だと思っていたんです(笑)。
実際に初めて生で見た時はどうでしたか?

 

大学生になって旅行で初めて東京に来たのですが、SHIBUYA109に感動したのを覚えています(笑)!電車に乗った時は、渋谷や池袋、新宿、代官山など、電車のホームの駅名の看板を見ていちいち感激しましたね。「これは噂の!」「実在していたんだ!」って。

 

SNSがない時代のプリ帳は「自己表現の場」

 

現在、ウーパールーパーアーティストとして活躍されていますが、そもそものきっかけは何だったのですか?
高校生の時に写真を見てウーパールーパーの存在を知ったのですが、最初はキャラクターっぽいというか、架空の生き物かなと思っていて。実在することに衝撃を受けて興味が湧きました。
現在、飼育もされているんですよね?
はい。大学の時からウーパールーパーの画を描き始めて、徐々にのめり込んで飼育も始めました。その後、気づいたらウーパールーパーを描くのがメインになってという感じですね。
飼育より画を描く方が先だったのですね!ウーパールーパーと出会った高校時代を振り返りつつ、いまの時代を生きる高校生にメッセージをお願いします!
高校生の時に出会った「ウーパールーパー」は、今も夢中になっていて、作品も作り続けています。なので、ぜひ高校時代に、自分が好きなものとか夢中になれるものを見つけて欲しいなと思います!夢中になるものは、メジャーな歌手でもいいと思いますし、マイナーだったり、あまり理解され難いジャンルのものでもいいと思います。
今日は色々プリについてお話し伺ってきましたが、最後に、ユキンタさんにとってプリとはどのような存在ですか?
プリやプリ帳は「自分を表現する場」でしたね!プリ帳は、友達にも見て楽しんでもらえることを意識して作っていたように思えます。私の制作活動も、みなさんに楽しい!面白い!と思っていただけるものを目指しているので、プリ帳はその原点だったのかもしれません!

 

 

 

 

PROFILE

 

久保 友香  Yuka Kubo

東京大学大学院博士課程修了(環境学博士)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師、東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員など歴任。著書に『「盛り」の誕生―女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』(太田出版、2019)。
好きなものは、ビール、羊羹、芸能ニュース。今年の目標は、昨年に引き続き、昭和初期を知るおばあちゃんたちとたくさん会うこと。

 

 

門脇 彩  Aya Kadowaki

専門学校を卒業後、2017年新卒としてフリュー株式会社に入社。広報として、プリに関する最新情報や魅力を発信中。好きなものは、旅行、焼肉、ドライブ。今年の目標は、仕事もプライベートも新しいことに挑戦すること。

 

 

長田 麻衣  Mai Osada

総合マーケティング会社を経て、SHIBUYA109のマーケティング担当となる。毎月200人のaround20(15歳〜24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。今年の目標はSHIBUYA109 lab.所長として若者に関する講演に講師として登壇すること。そして「大人っぽさ」と「透明感」を兼ね備えた女性になること。

 

 

ユキンタ yukinta

ウーパールーパーアーティスト/イラストレーター/デザイナー
同志社女子大学 学芸学部 情報メディア学科卒。ウーパールーパーの作品を主に制作。カラフルで独特な色使いが特徴。作品は海外でも販売中。本物の飼育も行う。今後の目標はウーパールーパーを通して文化を創ること。たくさんの方にウーパールーパーの魅力を伝えたい。近年はアート、デザイン系ワークショップの講師も行う。
Instagram:@yukinta
Twitter:@yukinta_art