REPORT
レポート
SHIBUYA109 lab.
2018.12.18
#エンタメ・カルチャー
【東大研究員×フリュー×SHIBUYA109 lab.連載企画】プリ帳HISTORY 第8回
「プリ帳」からガールズカルチャー史をひも解く本連載。第8回目のゲストは、「ギャルも電子工作をする時代!」をスローガンに掲げ、活動をしている「ギャル電」メンバーのまおさん。
毎回ゲストを迎えて「プリ帳」から日本のガールズカルチャー史をひも解く連載企画“プリ帳ヒストリー”。
“盛り”を研究する久保友香先生。誕生以来若い子たちを魅了し、その青春を写し出してきたプリントシール機シェアNo.1のフリュー株式会社。そして長年若者の流行を見続けてきたSHIBUYA109の視点をかけ合わせることで、各世代のプリ帳を考察していきます。
第8回目のゲストは、「ギャルも電子工作をする時代!」をスローガンに掲げ、活動をしている「ギャル電」メンバーのまおさん。日本とタイのハーフで、9歳から高校卒業までタイに在住。タイで日本のギャルカルチャーを研究していたというまおさんに、当時のお話を伺いました。

ゲストの「プリ履歴書」

 

 

【研究メンバーはこの3人】

 

久保友香先生

シンデレラテクノロジーを研究

稲垣涼子さん

フリュー株式会社『ガールズトレンド研究所』で所長を務める

長田麻衣

「SHIBUYA109lab.」で所長を務める

 

放課後は家でギャルメイク!Facebookがステージだった

 

 

まおさんは、タイに住んでいる際も日本のギャルカルチャーを研究していたそうですが、そもそもギャルカルチャーに惹かれた理由は何だったのですか?

小単純にかわいいなと思っていたのと、私は日本とタイのハーフで肌が黒いので、自分にフィットしたファッションって“ガングロ”なんじゃないかなって思っていたというのも大きいですね。

タイでは、学校にもギャルメイクをしていたのですか?

 

それが国公立の学校で、校則がかなり厳しかったんですよ…。なので、放課後家に帰ってから1人ギャルメイクを楽しんでいました。

メイクの練習ですか?

 

研究です!メイクしてFacebook用の写真を撮ったらメイクを落とす!みたいな(笑)。私にとってのステージはFacebookでしたね。

Facebookには、メイク以外にどのようなものをアップしていましたか?

 

プリも撮るたびにアップしていました。ただ日本の携帯を持っていなかったので、デジタルデータが取得できず地道にスキャン(笑)。いま思うと、Facebookが私の“プリ帳”でした。

 

店員さんがつきっきり!? タイのプリ事情

 

以前タイに行った際にプリ機があるお店を見つけたのですが、タイでもプリは撮っていましたか?

日本でいう渋谷のようなサヤムという場所にある「サヤムスクエア」の中にプリ機が2〜3機あって撮っていました!でも最新機種は無くて、かなり古い機種なんですよ…。

海外に日本のプリ機が置かれているところがあると聞きますが、フリューのプリ機は、基本的には日本国内向けとして開発しています。タイの女の子たちは問題なく撮影できていましたか?

そうだったのですね!全部日本語なので、店員さんがつきっきりで説明してくれるスタイルでした。タイの通貨も投入口に入らないので店員さんに。最後は切って透明の袋に入れて渡してくれました。

まおさんやタイの方は、どのような目的でプリを撮っていたのですか?

 

タイ人は写りというより、プリを「体験」という形で楽しんでいましたね。「目が大きくなる!すごい!」って。私はとにかく盛ることが目的で、中学のときはメイクが下手だったので、プリで最後仕上げてもらっていました。

プリ帳は作っていなかったのですか?

 

そうですね。私の世代は日本では交換とかしていたみたいですけど、タイにはそういう文化がなかったので大切にしまっていました。

まおさんにとってプリってどんな存在ですか?

 

研究の成果!ギャル研究が生き甲斐みたいなところがあったので、プリは本当に宝物です。

リを撮りまくる!日本で行っていた“ギャル活”

 

日本にはどれくらい帰っていたのですか?

年に1〜2回、一度に1ヶ月くらい滞在して自分なりの「ギャル活」をしていました!

「ギャル活」ですか !?

 

eggやRanzuki、Popteenを買ってなめるように読んだり、プリをめちゃ撮ったり。これ(写真)は1日で撮ったプリです!一緒に遊んでいた小学校時代の友達は、ギャルではなかったんですけど、私と遊ぶときはギャル系に合わせてくれていました。

渋谷にもよく来ていたのですか?

 

地元が静岡だったので基本的には静岡です。もうなくなってしまいましたけどSHIZUOKA109にはよく行っていましたよ!

プリをたくさん撮ったのは、「プリ=ギャルの文化」と思っていたからですか?

 

それもありますけど、やっぱり盛れるから!

 

路上販売で購入も!安い服を109っぽく着こなしていた

 

当時、どういうファッションブランドが好きだったんですか?

 

ココルルとか、ポップな感じが好きでした。ただ、ギャルファッションをしたくても、日本では高いしタイでは売っていなかったので、路上販売のお店で200バーツ(約600円)とかで洋服を買って109ブランドっぽく再現していました。

109ブランドっぽく再現するために、どのようにしていたのですか?

 

アレンジとかはよくしていて、柄がギャルっぽくないから裏表逆にして着てみたり。

工夫がすごい!

当時のお手本は誰でしたか?

 

益若つばささん!かなり寄せていました。雑誌は、当時タイ語版のRayとかPopteenが出ていたんですけど値段が高かったので、基本的に雑誌は日本で買っていましたね。

メイクの道具は、タイで売っているものを使っていたのですか?

 

タイのも使っていましたが、カラコン・つけまつ毛は、日本製のものが本当に盛れるので使っていました。信頼感がちがいます!

海外のギャルたちとFacebookで交流♪

 

タイでは一緒にギャルカルチャーを楽しむお友達は多かったのですか?

 

いえ、周りにギャルっぽい子がいなかったので、Facebookでフランス人とかイタリア人とか、海外にいるギャルとつながって交流していました。

やりとりはどんなことをしていましたか?

 

プリをアップしたら「kawaii」ってコメントがきたり。高校生のときに、日本人の世界一周している有名なバックパッカーの方がいて、私を「タイ代表のギャル」として選んでくださったこともありました。

ワールドワイドなギャルのコミュニティでは、どこの国の人が多かったですか?

 

やっぱりフランスですね。パラパラサークルの動画はよく見ていました。姫ギャルが多かったイメージです。

日本のギャルを知っているまおさん的に、そういう海外のギャルはどう見ていましたか?

日本のギャルをアップデートしているというか、日本のギャルはこうだってイメージしてKawaiiをつけ足してる感じ。私は強めのギャルを目指していたのでちょっと系統は違いました。

そもそも日本のギャルって海外の女の子をモチーフにしているのに海外にギャルがうけるってすごく面白いですね!

ギャルとは生き方!ギャル電を通じてギャル精神を広めたい

 

「ギャル電」として活動されていますが、相方・きょうこさんとの出会いは?

 

相方は元ポールダンサーで、衣装を光らせたいというきっかけで電子工作に目覚めたそうで。私もカスタマイズするのが好きで、光るピアスや音に合わせて光るスカートなどを作っていたということもあり、共通の友達の紹介で2016年に知り合いました。

ギャルカルチャーに親しんできたまおさんが「ギャル電」という活動に至ったのには、どのような想いがあるのですか?

 

ギャルを伝えていく側になりたいと思っているんです。昔のギャルは「私はこれをやりたいからやる!」っていう意志があったけど、いまの若者にはあまりそういう人がいないじゃないですか…!

たしかに…!

周りの目を気にするという人が多くなってきたなかで、ギャルというすばらしい生き方があるということをもっと広めていきたいんです。電子工作という新しい要素を入れていったら、もっと興味もってもらえるんじゃないかなって思っていて。

益電子工作はそのための手段だったのですね!

 

日本のギャルカルチャー、そしてギャル精神は本当にすばらしいと思うので!

 

まおさんにとって、ギャルとは何ですか?

「生き方」ですね。周りの目を気にしないで、自分の基準で物事を考える。あと、ギャルはオタクだと思います。研究心がすごいじゃないですか!

たしかに、いまアイドルファンが多いですが、ギャルとアイドルファンって似ていて、対象が自分に向いているのがギャルで、他人に向いているのがアイドルファンなんじゃないかって思いますね。

そうですね。まおさんが、ギャルのメイクや服装を研究して「ギャル活」していたように、いまの子たちはアイドルやアニメなど自分の好きな対象を研究して「ヲタ活」しているのかも。徹底的に研究するという意味では、熱量は同じかもしれませんね!

 

取材・文/高尾ひとみ

 

 

 

PROFILE

 

稲垣 涼子 Ryoko Inagaki

2005年入社以来、プリントシール機の商品企画に携わる。現在はマネージメントも行う。
趣味は、美味しいもの、漫画、カラオケ、ホットヨガ、ダイビング、脱出ゲーム。なんでも記録するログ癖あり。
今年の目標は、社内の仕組みを整える、社外の方とたくさんお話する、家をキレイに保つこと!

久保 友香 Yuka Kubo

東京大学大学院博士課程修了(環境学博士)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師、東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員など歴任。著書に『「盛り」の誕生―女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』(太田出版、2019)。
好きなものは、ビール、羊羹、芸能ニュース。
今年の目標は、昨年に引き続き、昭和初期を知るおばあちゃんたちとたくさん会うこと。

 

長田 麻衣 Mai Osada

総合マーケティング会社を経て、SHIBUYA109のマーケティング担当となる。
毎月200人のaround20(15歳〜24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。
好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。
今年の目標はSHIBUYA109 lab.所長として若者に関する講演に講師として登壇すること。そして「大人っぽさ」と「透明感」を兼ね備えた女性になること。

ギャル電 まお Mao Gyaruden

渋谷のギャル全員が自力で光る世の中を夢見て、ギャル電というユニットで活動をしている
そして渋谷に電子工作ブームを起こす未来を想定し、技術サポートができるように大学では電気電子工を修了。
好きな食べ物は、何歳になってもクレープ。 DIY電子工作カルチャーが渋谷のストリートにちゃんと行きわたるような研究を、4月から修士に進学し研究していく。
Twitter:@GALDEN999
Instragram:@galdenshikousaku

 


貴重な海外でのプリ事情を伺い、プリの交換の文化は日本独自のものであること、当時の日本の若者にとってプリがコミュニケーションの中心になっていたことが改めて確認できました!
また、まおさんのFacebookでの積極的な発信姿勢からは、SNSの普及と、SNSを通して外部とつながりをもつことに対してより抵抗がなくなっていることが感じられます。
個人的に「ギャル」に対する見解も非常に共感。今、見た目が「ギャル」の若者はかなり減っていますが、好きなコンテンツに時間もお金もかける「ヲタ活」をする子たちは多くいます。そう考えると自分に向けてなのか、他者に向けてなのか、ベクトルの向きが違うだけでまだまだ「ギャルマインド」をもつ子はたくさんいるのかもしれません。