REPORT
レポート
SHIBUYA109 lab.
2018.05.17
#エンタメ・カルチャー
【東大研究員×フリュー×SHIBUYA109 lab.連載企画】プリ帳HISTORY
「プリ帳」からガールズカルチャー史をひも解く本連載。第1回目のゲストは、プリ機開発に携わる稲垣涼子さんにお越しいただきました。
毎回ゲストを迎えて「プリ帳」から日本のガールズカルチャー史をひも解く連載企画“プリ帳ヒストリー”。“盛り”を研究する久保友香先生。誕生以来若い子たちを魅了し、その青春を写し出してきたプリントシール機シェアNo.1の株式会社フリュー。そして長年若者の流行を見続けてきたSHIBUYA109の視点をかけ合わせることで、各世代のプリ帳を考察していきます。

第1回のゲストは、プリ機開発に携わる稲垣涼子さんです。

ゲストの「プリ履歴書」

 

 

【研究メンバーはこの3人】

 

久保友香先生

シンデレラテクノロジーを研究

稲垣涼子さん

フリュー株式会社『ガールズトレンド研究所』で所長を務める

長田麻衣

「SHIBUYA109lab.」で所長を務める

 

今回は第1回目ということで、プリを知り尽くす「ガールズトレンド研究所」所長の稲垣涼子さん(38)をゲストにお迎えし、プリ帳から当時のガールズカルチャーを紐解きます。
プリが誕生した1995年は中学3年生だった稲垣さんに、高校生時代の思い出がどっさり詰まった貴重なプリ帳を見せてもらいました。

 

プリは「友達の証」。 プリ帳を見て交友関係を把握していた

そもそもプリ(プリントシール機の略。以下「プリ」と表記)は、1995年に誕生したのですが、初めは全然流行らなくて、95年の後半で盛り上がったんですよね。本格的にブームが起こったのは96 年なので、稲垣さんはちょうど中3から高1にあがるときですね。

たくさん撮り始めたのは高1ですね。初めて撮ったのは中3のときですけど、それは残っていないんです…。

例えば中学から高校にあがるときに「プリが友達づくりに役立った」というようなことはありましたか?

ありましたね。当時「プリを撮る=仲がいい子」「仲良いならプリ撮らなあかん!」みたいな感じもある一方で、初めましてだけど「プリ撮る?」という流れから撮ったら仲良くなった気がする、みたいな。

やはり学校とかでも、プリ帳は見せ合っていましたか?

当時はみんなプリ帳を作っていたから、暇になったら「プリ帳みせて?」と見せ合っていましたね。例えば私のプリ帳を見た友達が、私と誰かが写っているプリを見て「あーこのふたり遊んだんだ!」って、友達が増えている情報をプリを通して共有したり、一緒に写ってはいないけど「交換している=友達になったんだな」っていう解釈をしたり、ある意味、交友関係を知るツールになっていました。

性格が出る!? とにかくキレイに貼ることにこだわっていたプリ帳

 

みんないろいろなものを「プリ帳」にしていたと思うんですけど、なぜそのスタイルにしたんですか?

正直あんまり覚えていなくて…。最初にこのスタイルではじめてしまったから、キレイに貼るシステムで貫き通したって感じですね。ただ、仕事で作る資料とかも文章や図形の位置が微妙にずれているのがすごく気になるタイプなので(笑)。プリ帳ってそういう性格が表れるのかも。

(プリ帳を見ながら)ここからが96年ですかね。客観的に見ると、プリのフレームに「おでん」とか「ゆきだるま」とか季節感のあるものが採用されているので、いつが冬なのか春なのかとかわかりますね(笑)。

確かに!そう思って見てなかったけど…フレームで時期や年代が分かりますね。おもしろい!

月に約3,000台出るほどのプリブーム! “裏ワザ”ができたプリ機も

本格的にプリが盛り上がった96年は、月3,000台くらい新機種を出していたそうですよ。

すごい!今みたいに、プリ機が1箇所にたくさん置いてある感じではなかったですか?

プリ=ゲーセンっていう概念じゃなかったですよね。

 

あちこちにポツポツある感じ。今でいう証明写真の機械みたいな感じですね。
プリ機の中には “裏技”ができる機種もあって、例えば、この4分割のプリは確か“裏技”でやったはず…! ゲームの裏技みたいな感じで「上上右右下下!」「決定!」のように、レバーとボタンの組み合わせでできたんです。16連写で撮影できるという裏技もあって。やるのはいいんですけど、連写が結構な速さで、撮影中ずっと爆笑していましたね。

裏技とか、人と違うものを求めるあたりが高校生らしいですね!

 

あとこのプリ。4分割のうち3枚が真っ黒で、何かの文字が背景に書かれているんですが、これたぶん、バグなんですよ!普通嫌じゃないですか。でも当時は「バグってる=レアやレアや!」って喜んでいましたね(笑)。

同じ機種でも置き場所によって写りが違う! いつの時代も“盛れる”プリ機が人気!

 

当時、同じプリ機でもお店によって写りが違いましたよね。隣にコカ・コーラの自動販売機があると顔がピンクっぽく写るとか(笑)!

写りの違い、確かにありましたね! すごく記憶に残っているのが、京都タワーにちょっとシールのサイズも他とは違うそこでしか見かけない”オリジナルプリ”みたいな機種があって「それが盛れる!」ってわざわざ撮りに行ってました。

「盛れる」って当時はなんて言っていたんですか?

 

「写りいいよね」って普通に言っていたと思います(笑)。あっ、このプリも盛れていてお気に入り!

やっぱり白っぽい写りのものが「盛れる」って感じだったんですかね?

 

そうですそうです。
プリ帳を見ていて気づいたのですが、自分で「盛れる」と思っているプリ機ではアップで撮ってますね(笑)。

小麦肌が人気の時期なのに、プリは顔が白く写る=盛れるという…。なんだかそういう心理っておもしろいですね。

安室ブーム到来!姉と遊ぶときはちょっと大人ぶって厚底靴を履いていた

 

ここら辺は97〜98年くらい。こっちが姉ですけど、安室ちゃん風ですよね!リップが濃く、まゆげが細くて黒いみたいな…!

そのころは、安室奈美恵さんに憧れる「アムラー」に牽引されて茶髪のメッシュヘアやミニスカート、厚底靴がブレイクした時期ですね!SHIBUYA109からは、ルーズソックスや厚底ブーツなどの大ヒット商品が生まれています。ちなみに97年は、SHIBUYA109が「ギャルの館」への改革を本格化し始めたころで、年間売上高トップは、サーフブランドの『me Jane』でした。

このとき私は安室ちゃんがすごく好きってわけではなかったのですが、厚底ブーツ履いていましたね。ただ、日常的にではなく、コスプレ的な感じで姉と遊ぶときなどにそういう格好をしていました。

稲垣さん、プリ履歴書の“参考にしていた人”に「お姉さん」とありますが。

 

姉が2人いて、姉と一緒のときは服装も大人っぽくしているんですよね。ちょっとお姉さんに見られたいとがんばって。2番目の姉にはたまに洋服を借りていました。

このときの「大人っぽくする」って、具体的にどういう感じでしたか?

 

メイクがちょっと濃いとか、服装…それこそ厚底ブーツを履くとか。

 

服装の系統はどんな感じだったんですか?

 

パルコ系ですね。古着とかも着ていました。

 

カワイイ!! 他の学校とかから人気だったんじゃないですか?

 

いやいや…そんなことないですが…。でもポケベルの番号が友達から渡って知らない人から連絡がくることとかはありましたね(笑)。

それってプリをきっかけに知れ渡ってるんですかね? 運動部の県大会で有名とかじゃないですよね?

ぜんぜん! 確かにプリで知られるというのもあったのかもしれないですね。

 

まるでSNOW…時代が変わっても若者が思う “かわいい”は同じだった!?

こうやってプリをみていくと「SNOW」とかに通じるものがありますよね。うさぎの耳がはえてるとか。

あ~、たしかに!!!

 

これはコアラのマーチ、鼻がついてますね!

SNOWぽい!

 

でもこれってSNOWのように顔に合わせてくれるんじゃなくて自分から合わせていくってことですよね?

もちろん(笑)。勝手になってくれなくても、自分から合わせにいきますよ!

 

自分からいくSNOW(笑)!

 

 

いまの子がこれをみたらどう思うんだろう…。

 

一周して新しいと感じるかもしれないですね(笑)!

 

プリ帳は最高の宝物。いまの若い子に伝えたいのは「とにかくプリ帳を作って」ということ

 

プリに関して、当時の若者といまの若者の違いってあるのでしょうか?

 

いまも昔もプリの“本質”は変わってないと思います。ただ、プリを撮る目的が「遊びとしての楽しさ<盛れるかどうか」に変わっているのが一番大きな特徴ですね。いまの若い子がプリの遊びの要素を知らないのはもったいないと思うので、メーカー側の人間として、今後プッシュしていきたいです。

いまの若者に、「プリをこんなふうに楽しんでほしい」などといった思いはありますか?

「こんな宝物ありますか?」って思うくらい、プリ帳って貴重な思い出がたくさん詰まっています。だから、いまの若い子たちにも「騙されたと思って、入れるだけでいいからアルバムに入れてみて!」と言いたいですね。将来見返したときに、絶対絶対まとめておいて良かったと思うはずです!

 

取材・文/高尾ひとみ

 

 

 

PROFILE

 

稲垣 涼子 Ryoko Inagaki

2005年入社以来、プリントシール機の商品企画に携わる。現在はマネージメントも行う。
趣味は、美味しいもの、漫画、カラオケ、ホットヨガ、ダイビング、脱出ゲーム。なんでも記録するログ癖あり。
今年の目標は、社内の仕組みを整える、社外の方とたくさんお話する、家をキレイに保つこと!

久保 友香 Yuka Kubo

東京大学大学院博士課程修了(環境学博士)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師、東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員など歴任。著書に『「盛り」の誕生―女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』(太田出版、2019)。
好きなものは、ビール、羊羹、芸能ニュース。
今年の目標は、昨年に引き続き、昭和初期を知るおばあちゃんたちとたくさん会うこと。

 

長田 麻衣 Mai Osada

総合マーケティング会社を経て、SHIBUYA109のマーケティング担当となる。
毎月200人のaround20(15歳〜24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。
好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。
今年の目標はSHIBUYA109 lab.所長として若者に関する講演に講師として登壇すること。そして「大人っぽさ」と「透明感」を兼ね備えた女性になること。

今回初めての取材でしたが、久しぶりに角が丸いプリを見ることができ、とても懐かしい気持ちになりました!
当時のプリのフレームと現代の写真アプリのフレームが似ているなど、女子たちの「かわいい」「盛れている」と感じるポイントは現在も変わらないようです。