REPORT
レポート
SHIBUYA109 lab.
2018.08.28
#エンタメ・カルチャー
【東大研究員×フリュー×SHIBUYA109 lab.連載企画】プリ帳HISTORY 第4回
「プリ帳」からガールズカルチャー史をひも解く本連載。第4回目のゲストは、“若者メディア”の制作ディレクター、髙尾ひとみさん。

ゲストの「プリ履歴書」

 

 

【研究メンバーはこの3人】

 

久保友香先生

シンデレラテクノロジーを研究

稲垣涼子さん

フリュー株式会社『ガールズトレンド研究所』で所長を務める

長田麻衣

「SHIBUYA109lab.」で所長を務める

 

 

プリ帳はぎっしり詰めて貼るのが理想!キレイに貼りたいから“プリ待ち”をしていた

 

 

プリの量がすごいですね!撮るのが好きだったことが伝わってきます。

 

プリ帳を一番がんばって作っていたのが中学のときで、無印良品のノートにぎっしり貼っていました。高校生になると部活が忙しくなり、プリを撮る頻度も減ってプリ帳がかなり中途半端な状態に…。ノートを途中で変えたり隙間もあったりと「完璧にやりたい!完璧にできないならどうでもいいや…」みたいな私の性格がかなり表れちゃっていますね(笑)。

なっつさん(髙尾さんの呼び名)が中1の1999年頃にプリは大きく進化していて、落書きが本格的にできるようになったり、全身が撮れるプリが出てきたりしています。

そう、私が中高生の6年間でプリは目まぐるしく変化しましたね!学校がない土日にいかにプリを増やすかが楽しみでもあり、週明けの月曜に教室で見せ合ったり交換したり。自然と生活の一部になっていました。

ここ(※写真右)剥がれてしまっていますが…

 

あ、違うんです!ここはぎっしり貼るための“プリ待ち”ですね。このページをキレイに埋めたいからこのサイズのプリを撮る、みたいなこともしていました!

“プリ待ち”…おもしろい!

4コマ」に「つなぎプリ」…その場で考えたプリ作品たち

 

物語になっているプリが多くて印象的でした。

 

特別流行っていたという訳ではないのですが、確かに4コマ漫画風に落書きをしていたり、2枚で1つのプリに見えるよう落書きやポーズで仕上げていたりしていましたね。

このようなものを撮る際は、どのように準備・撮影をしたのですか?

「プリ撮ろう」ってゲーセンに行ってから撮り始めるまでに考えていたような気がします。「何持ってる?」「これいいじゃん!写そう!」とかそんなノリで…。クリエイティブ思考が高い子と撮るときはかなり計画的に、事前にカフェとかでこんなプリにしようとか打ち合わせをしていました。

まさに「作品」ですね!

 

たしかに作品かも!当時の思いや起こったことを決められた枠内に表現していく…もしかすると雑誌の編集の仕事とかにつながっていたのかもしれません(笑)。

 

撮ったプリは、プリ帳に貼る以外どう使っていましたか?

 

「プレゼント」としてプリを使うこともありました。お誕生日おめでとうとかメッセージを書いて1分割にしてそのままあげるとか。

少し前は、誕生日にコルクボードをプレゼントするのが流行っていて、そこにプリを貼っている女の子もいましたね。また、作ったコルクボードを持ってプリを撮影する子もいました。

あと携帯の裏に貼っていましたね。大学のときはパソコンに。いまだとシールを直接電子機器に貼るなんて…!と思いますが、当時はお気に入りのプリを貼ることで気分があがっていました。

電池パックのところに好きな人とのプリ貼るとかありましたよね!

 

ありました、ありました!何か貼ってありますかね…(電池パック部分を開ける)…残念!部活の先輩たちと撮ったお気に入りプリでしたね。

THE女子校って感じ!

100円なのにクオリティー高め♪町田で撮りまくった“ダイソープリ”

 

落書きに「町田」というキーワードを多く見つけました。

 

地元愛が故に…!特に同じ学校の子で町田に住んでいる仲良い子が何人かいて、その仲間で撮るときは必ず書いていたような気がします。

遊ぶのは町田が多かったのですか?

そうですね。もう場所が変わってしまいましたが、当時日本一大きいと言われていたダイソーが町田にあって、中には100円で撮れるダイソープリもありました!

ダイソーのプリってどうでしたか?

 

やっぱり安いのが魅力的でした。遊び要素多めで撮れたというか。例えば、真顔で撮影して顔以外を白く塗りつぶす「む」という撮り方が友達との間で流行って、何回も何回も撮ったり。

斬新な遊びですね!

1枚400円のプリでは勿体なくてできないですね。あとプリで使う小道具をダイソー内で買えたので便利でした!

町田といえば109が2002年に開業しましたが、行っていましたか?

 

「109が町田にできる」という噂が流れたとき「絶対嘘でしょ」って友達と言っていたら本当にできて…かなり驚きました!あの109が町田に!!って。福袋とか渋谷よりはスムーズに買えたので地元にできてラッキーでした!

チーム名や会合名をつけるといい!? プリの落書きで結束感UP

 

プリ帳に繰り返し登場する仲間にチーム名が付いているのですが、名前は意識的に付けていたのですか?

基本的につけたがるタイプでした。例えば「鶴③(つるさん)」という3人組の名前があるのですが、それは地元の最寄駅・鶴川に住む3人組というのが由来(笑)。

名前を付けることの利点ってありましたか?

 

プリで落書きするとき、個人名を並べるより結束感はでましたね。完全内輪ネタですけど。例えば「鶴③」の場合、プリに書いたりしていたら学校内でも「鶴③」と認識されて友達から呼ばれたりするようになりました。

落書きで「イモ会」って書いてありますけど、何ですか?

 

「イモ会」は、毎週火曜日の放課後に下北沢へ行ってブラブラした後ファーストキッチンでフレーバーポテトを食べる友達との習慣を自分たちで「イモ会」と呼んでいたって感じですね。

本当に何でも名前つけちゃうんですね!

 

プリは日常を切り取るドキュメンタリー!思い出の整理整頓は怠らずやってほしい

 

このプリ帳をみていると、プリ全盛期を駆け抜けている感じがします。

 

なんとなくこの時代と自分の性格が合っていた気がしますね。もし「プリ=盛る」の時代だったら、ここまで撮っていなかったかも…!

なっつさんにとってプリってどんな存在ですか?

 

「日常の切り取り」ですかね、かっこよくいえば「ドキュメンタリー」。◯◯を食べておいしかった、こんなことがあってうれしかったなど、大したことじゃないけどちょっとしたことが大量に記録されていて、本当に撮っていてよかったなと思います。高校生雑誌を作っていたときも、いまやっている映像のお仕事もいまを切り取るものが多くて、昔からそういうのが好きだったんだなって思います。

日常の切り取りという意味では、いまでいうInstagramのストーリーに通じますね!

 

いまの若者にどんなことを伝えたいですか?

 

正直時代が違うので全く同じことを勧めることはできませんが、「日常の切り取り」をたくさんしてほしいですね。そしてその切り取りをきちんと整理整頓して、かけがえのない自分のドキュメンタリーを作ってもらいたいです。

 

 

 

PROFILE

 

稲垣 涼子 Ryoko Inagaki

2005年入社以来、プリントシール機の商品企画に携わる。現在はマネージメントも行う。
趣味は、美味しいもの、漫画、カラオケ、ホットヨガ、ダイビング、脱出ゲーム。なんでも記録するログ癖あり。
今年の目標は、社内の仕組みを整える、社外の方とたくさんお話する、家をキレイに保つこと!

久保 友香 Yuka Kubo

東京大学大学院博士課程修了(環境学博士)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師、東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員など歴任。著書に『「盛り」の誕生―女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』(太田出版、2019)。
好きなものは、ビール、羊羹、芸能ニュース。
今年の目標は、昨年に引き続き、昭和初期を知るおばあちゃんたちとたくさん会うこと。

 

長田 麻衣 Mai Osada

総合マーケティング会社を経て、SHIBUYA109のマーケティング担当となる。
毎月200人のaround20(15歳〜24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。
好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。
今年の目標はSHIBUYA109 lab.所長として若者に関する講演に講師として登壇すること。そして「大人っぽさ」と「透明感」を兼ね備えた女性になること。

髙尾 ひとみ Hitomi Takao

若者向けインターネット番組を制作。
慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、テレビ(情報番組)の制作に携わる。その後、若者をターゲットにした番組を作りたいと考え、高校生参加型雑誌の編集部に入り若者研究をしながら修行、そして現在に至る。
好きなものは、豚肉と白菜。今年の目標は、毎朝グラノーラを食べ、紅茶を飲んで一息つけられるようなゆとりのある生活をすること。
 


今までのプリ帳の中で、一番エンタメ性の強いプリ帳でした!
プリを撮ること、プリ帳を作ることに全力投球だったことが伝わってきます。
また、当時はお気に入りのプリを携帯に貼っていましたが、今のaround20女子は、撮ったプリをそのままスマホケースに挟んでいる子が多いです。